「私が未成年だって知ってる? 16だって知ってるよね?」
帰りのタクシー代として3,000ペソを渡した後、相手はそう言った。
マニラに来る2週間前から連絡を取っていた。性の話はしていた。でも、お金を払う約束はしていなかった。
注意していたつもりだった。事前に被害談も読んでいた。
それでも、俺はホテルの部屋からフロントに電話をかけ、セキュリティを呼ぶことになった。
悔しかったのは、何も知らずに会ったわけではなかったことだ。知っているつもりで、今回の相手は違うと判断していた。
この記事では、自分が美人局だと受け止めた金銭要求の経緯を振り返る。相手の実年齢や身元、常習性は確認できていない。ここに書けるのは、俺が体験したことと、そこから考えたことだ。
2週間も連絡する相手が、わざわざだますだろうか
渡航の2週間ほど前、Tinderの位置情報をマニラに変えた。そこでマッチした相手と、LINEで話すようになった。
恋人のように一日中連絡を取り続けていたわけではない。それでも普通に会話をして、会う予定を相談していた。
デートして、最後はホテルに行こう。そういう話もしていた。相手からは、楽しみにしている、興奮しているという趣旨の返事があった。
性的な関係を期待していたことは隠すつもりはない。ただ、その対価として金銭を払う話は出ていなかった。




事前に読んだ被害談の中には、最初から金銭のやり取りがあるものや、相手がLBだと記されているものがあった。
その印象から、俺は勝手に手口の型を作っていた。出会って短時間でだますもの。わざわざ2週間も連絡を続けるものではない。
今回の相手は、その型に当てはまらないと思った。
今振り返ると、「2週間連絡していた」は事実でも、「だから普通の出会いだ」は俺が付け足した意味だった。
違和感はあった。でも、帰ってもらうとは言わなかった
当日は大雨だった。ホテルに来てもらったものの、外出を断念して部屋に上がった。
会ってすぐ、何となく怪しいとは感じた。外見から、トランスジェンダーかもしれないとも思った。ただし、本人に確認した事実ではないし、外見から分かることでもない。
事前に読んだ体験談の印象と、目の前の相手への見方が混ざっていたのだと思う。性別についての推測は、その人が金銭を要求するかどうかの根拠にはならない。
怪しかったら、直前でも帰ってもらおうとは考えていた。
それでも、警報が出るほどの雨の中を来てもらったという気持ちがあった。ここまで来た人に、帰ってとは言いづらかった。
そして、可愛いと思っていたのも事実だ。
警戒する理由は探していた。でも、会い続けたい理由も、自分の中にあった。

タクシー代が「足りない」に変わった
部屋では映画を見始めたが、相手はすぐに眠いと言った。その後、親密な時間を過ごした。希望が合わない場面もあり、俺はもう寝ようと伝えた。
すると、母親から電話が来たので帰らなければならないと言われた。
その流れで、お金をくれるかと聞かれた。
俺は帰りのタクシー代のつもりで3,000ペソを渡した。雨の中を来てくれたことへのお礼も伝えた。大雨なら、帰りの交通費も高くなるかもしれないと思った。
返ってきたのは、「足りない」という言葉だった。
そして、自分は16歳だ、知っているよね、という主張が続いた。
俺はそれを、追加で払わせるための脅しだと受け取った。ただし、実年齢を確認できていない以上、その発言自体を嘘だと断定することはできない。
まずは自分で解決したかった。財布の中身を見せて、これでいいかと聞いた。
手持ちの現金は、最初の3,000ペソを含めて合計5,500ペソだった。
それでも足りないと言われた。一度、先に渡した3,000ペソを返してほしいと伝えたが、結果として現金は全部、相手の手に渡った。
自分から差し出した部分と、取られたと感じた部分がある。少なくとも、5,500ペソという料金で事前に合意していたわけではなかった。
現金を全部渡しても終わらない。そこでようやく、フロントに電話した。
セキュリティに説明したのは、金額よりも経緯だった
セキュリティが部屋に来た。
英語で細かい事情を説明するため、ChatGPTを使った。最初は音声で翻訳してもらおうとしたが、セキュリティにそれはだめだと言われ、文字でやり取りすることになった。
なぜ音声がだめだったのかは分からない。
セキュリティからは、5,500ペソで同意したのかと確認された。
俺は、事前に金銭の話はしていないこと、帰ると言われてタクシー代を渡したこと、その後に足りないと言われ、今は手持ちの5,500ペソが全部相手に渡っていることを説明した。
この順番を伝える必要があった。金額だけなら、支払いについて話し合っているようにも見える。でも、俺が説明したかったのは、帰る段階で初めて金銭を要求されたという経緯だった。





その後、セキュリティと相手が話し合い、俺には追加3,000ペソで合意するよう伝えられた。
相手がまた近寄ってきたので、近づかないで、触らないでほしいと伝えた。そこからは、セキュリティに間に入ってもらうことにした。
ただ、現金はもうなかった。
そう伝えると、セキュリティからATMまで同行するので、一緒にお金を下ろして終わらせようと提案された。
俺たちは全員で部屋を出た。

<!– 要確認:ATMでの出金から追加3,000ペソの受け渡し、相手が去るまで。以前の説明では計8,500ペソで収束とのことだが、最新の聞き取りは部屋を出たところまで。確認後に末尾の経緯を補う。 –>
「2週間もかけるはずがない」という思い込み
その後、相手から連絡はない。
俺は常習的にやっているのではないかと疑った。年齢を持ち出したのに警察へ連絡せず、追加の支払いを求めたことも、俺には疑わしく感じられた。
ただ、連絡がないことや、その場で警察を呼ばなかったことだけで、常習犯だとも、年齢の主張が嘘だとも言えない。相手が何を考えていたのかは分からない。
今も引っかかるのは、2週間という時間だ。
俺は、こうした手口をもっと短時間で済ませるものだと思っていた。だから、2週間LINEを続けた相手は違うと感じた。
でも、2週間ずっと俺に時間を使っていたわけではない。時々メッセージを交わした2週間を、俺は相手の誠実さを判断する材料にしていた。
相手が最初からそれを狙ったのかは分からない。それでも、その期間が俺の警戒を弱めたことは確かだ。
ChatGPTにも相談した。でも、判断したのは俺だった
実は、会うまでの判断の中でChatGPTにも、美人局だと思うかと聞いた。
俺の記憶では、違うと思うという趣旨の返答だった。それだけで会うと決めたわけではないが、相談はしていた。
今考えると、ChatGPTが見ていたのは、俺が渡した情報だ。相手の本心や、隠している事情を直接確かめられるわけではない。
現場では翻訳のために使った。一方で、会う前に求めていたのは、相手を信用していいかという判断だった。同じAIでも、頼んでいたことは違っていた。
「2週間も連絡している」「お金の話は出ていない」「雨の中を来てくれた」。そこに、可愛いから会いたいという俺の気持ちもあった。
違和感はあった。それでも、会い続ける方を選んだ。
金銭を要求された責任まで自分で引き受けるつもりはない。ただ、自分がどう判断したのかは、振り返っておきたい。
今回見えたのは、フィリピンの犯罪の背景すべてではない。自分が知っていた被害談に当てはまらない相手を、どうやって安心できる相手に変えてしまったか。その過程だった。
警戒していなかったわけじゃない。
会いたい気持ちも、一緒に判断していた。
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