フィリピンの観光業がコロナ後の急回復を続けている。2025年の外国人訪問者数は過去最高水準に迫る勢いで、マニラ・セブ・ボラカイといった主要観光地に加え、新たなエリアへの注目も高まっている。日本人旅行者にとって身近なフィリピンの今を、最新データと現地感覚でまとめてみたい。
外国人訪問者数、コロナ前を超える勢い
フィリピン政府観光省のデータによると、2025年の外国人訪問者数は700万人超に達し、コロナ前(2019年)の約820万人に急速に近づいている。2026年は年間900万人超を目標としており、観光業をGDPの10%以上に育てるという政府目標の実現に向けて着実に前進している。
訪問者の国別内訳では、韓国が最大で全体の約20%を占める。次いでアメリカ、日本、中国、オーストラリアが続く。日本からの訪問者数はコロナ前の水準まで回復しつつあるが、LCC路線の拡充や直行便の増加が需要を下支えしている。
特に注目されるのは、短期・複数回訪問の旅行者が増えている点だ。「フィリピンのどこかに1〜2週間」という滞在型から、「3〜5泊で複数回訪問」というリピーター型の旅行者が増加しており、観光消費の形が変わってきている。
【筆者所感】個人的にセブとマニラには年に数回訪れる。コロナ前と比べて、空港の混雑ぶりと街の活気が明らかに戻ってきた。特にセブのITパーク周辺やマクタン島のリゾートエリアは、観光客と現地の若いビジネスパーソンが混在する独特の雰囲気になってきている。
注目エリアの変化:マニラのBGCとシラオとの違い
首都マニラ(メトロマニラ)では、ボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)が国際的なビジネス・観光拠点として存在感を増している。近代的な高層ビル・高級ホテル・レストランが立ち並ぶBGCは、「マニラのシンガポール」とも呼ばれ、富裕層や外国人ビジネスパーソンの集積エリアになっている。
一方、伝統的な観光エリアのマカティやイントラムロス(スペイン時代の城塞都市)も引き続き人気だ。歴史遺産と現代都市が混在するマニラの多様性は、東南アジアの中でもユニークな観光資源だ。
リゾートでは、ボラカイ・パラワンに加え、シキホル島やカミギン島など「穴場」として知られるエリアへの注目が高まっている。SNSで美しいビーチ写真が拡散されることで、かつては旅慣れた旅行者しか知らなかったエリアに観光客が集まりはじめている。
【筆者所感】BGCを初めて訪れたとき、同じマニラとは思えないほどの清潔感と整備された街並みに驚いた。ただ、「フィリピンらしさ」という意味ではマカティやBinondo(中国系商店街)の方が面白い。旅の目的によって、訪れるべきエリアは全く異なる。観光業の「高級化」と「大衆化」が同時に進んでいる点がフィリピンの面白さだと思う。
課題:インフラ整備と治安問題
フィリピン観光業の成長を阻む課題もある。最大のボトルネックは交通インフラだ。マニラの渋滞は東南アジアで最も深刻な部類に入り、空港(ニノイ・アキノ国際空港)の処理能力も慢性的に不足している。新空港(ブラカン空港)の建設が進んでいるが、完成は2030年代とみられている。
治安面では、特定エリアでの犯罪リスクは引き続き存在する。観光省はホットライン整備や観光警察の強化を進めているが、旅行者が適切な情報収集と行動管理を行う必要があることに変わりはない。
【筆者所感】治安については、「フィリピンは危ない」というイメージと現実の間にかなりギャップがある。適切なエリアで、昼間に活動する分には日本と大差ない安全レベルだ。ただ、深夜の単独行動や人通りの少ない路地への立ち入りはどこの国でもリスクがある。現地情報を事前に収集し、地元の人のアドバイスに従うのが基本だ。
まとめ
フィリピン観光業はコロナ後の急回復フェーズから、「持続的成長」への転換期を迎えている。訪問者数の拡大と観光地の多様化が進む一方、インフラ整備と治安対応という課題も山積している。日本人旅行者にとってフィリピンは距離的にも近く、英語が通じる使いやすさも魅力だ。変化を続けるフィリピンを、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
フィリピンのデジタル経済、急速に拡大中
フィリピンのデジタル経済も見逃せないトレンドだ。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業は長年フィリピンの主要産業として成長してきたが、AIの普及に伴い業務の自動化が進み、BPOの形が変わりつつある。一方でソフトウェア開発・クリエイティブ産業・デジタルマーケティングといった高付加価値分野へのシフトが進んでいる。
フィリピン人のSNS利用率は世界トップクラスで、1日あたりのSNS利用時間は平均4時間以上とされる。この旺盛なデジタル消費が、国内のeコマース・デジタルコンテンツ・フィンテック産業の成長を後押ししている。GCash(電子マネー)の普及は特に顕著で、銀行口座を持たない層もスマートフォン一台で送金・支払いができる環境が整ってきた。
【筆者所感】フィリピンでGCashを使っている人の多さには毎回驚かされる。市場の屋台でもGCashで支払えるところが増えていて、現金いらずで過ごせる場面が増えた。「現金社会」というイメージは急速に変わりつつあり、デジタル化が日常生活レベルで進んでいることを実感する。
