ベトナムが2030年までに7つの新空港を開設し、国内の年間旅客処理能力を2億2,000万人規模に引き上げる計画を正式推進していることが明らかになった。現在ベトナムには22の空港があるが、急増する航空需要に処理能力が追いつかないのが現状だ。今回の拡張計画は観光・ビジネス双方に大きな影響をもたらす可能性がある。
なぜ今、7つの空港が必要なのか
ベトナムの航空旅客数は過去10年で急増し、コロナ後も急速に回復した。主要3空港(ハノイのノイバイ・ホーチミンのタンソンニャット・ダナンのダナン)は慢性的な混雑に悩まされており、特にタンソンニャット国際空港は処理能力の限界を超えた運用が続いている。
ホーチミン市郊外のロンタイン国際空港は2026年中の第1期開業が予定されており、年間2,500万人の処理能力を持つ。これに加えて地方都市の7空港が新設されれば、ベトナム全土の航空ネットワークが劇的に拡充される。地方空港の整備は観光の分散化にも直結する。これまでハノイ・ホーチミン・ダナン・ニャチャン・フーコック島に集中していた旅行者が、新空港によって地方の観光スポットにアクセスしやすくなる。
【筆者所感】ベトナム国内移動の不便さは旅行者として実感することが多い。ハノイ〜ホーチミン間は飛行機で2時間だが、地方都市への移動は乗り継ぎが必要だったり長距離バスに頼ることになる。空港網の拡充は、ベトナムをもっと「旅しやすい国」にする大きな一歩だ。ロンタイン空港の完成は個人的にも楽しみにしている。
デジタル入国カードの全国展開も進行中
ベトナムは空港インフラの拡充と並行して、入国手続きのデジタル化も加速させている。ホーチミン市のタンソンニャット国際空港でパイロット運用されたQRコード式の電子入国カードが、全国の主要空港に展開される予定だ。従来の紙の入国カードに代わり、スマートフォンからオンラインで事前申請し空港でQRコードを提示するだけで手続きが完了するシステムだ。
これはベトナム全体の「スマート観光」推進の一環でもある。観光省は訪問者データのデジタル収集を通じて、旅行者の動向分析と観光政策の精緻化を目指している。入国データのデジタル化は統計の精度向上にも貢献する。
【筆者所感】東南アジア各国の入国手続きは、国によって効率に天と地ほどの差がある。シンガポール・タイはほぼストレスなし、フィリピンのニノイ・アキノ空港は長蛇の列になることが多い。ベトナムはここ数年で改善が見られるが、まだ窓口での確認に時間がかかることもある。電子カードの全国展開が実現すれば入国体験が大幅に向上するはずだ。
LCC競争激化と旅行コストの低下
空港網の拡充と合わせて、ベトナム国内の航空会社間の競争も激化している。国営のベトナム航空、LCCのベトジェットエア、バンブーエアウェイズが路線網の拡充と価格競争を繰り広げている。ベトジェットは国際線拡充にも積極的で、日本・韓国・台湾・オーストラリアへの直行便を増便している。LCCの就航によって日本〜ベトナム間の航空券価格も下がっており、旅行者にとっては追い風だ。
新空港の開設でさらに就航都市が増えれば、選択肢はさらに広がる。特に地方の未開発観光エリアへのアクセスが改善されれば、旅行の多様化が一気に進む可能性がある。ベトナムをリピートする旅行者にとって、新たな発見の機会が増えることになる。
【筆者所感】ベトジェットはLCCとしてはサービスが悪くなく、短距離であれば快適に使える。ただし受託手荷物は別料金なので事前確認は必須だ。ベトナムへの旅行コストは今後さらに下がる可能性があり、より気軽に訪問できる国になっていくと思う。
まとめ
ベトナムの2030年に向けた空港7カ所新設計画は、単なるインフラ整備ではなく観光・ビジネス・物流の在り方を根本から変える可能性を持った政策だ。デジタル入国カードの展開や航空会社間の競争とも組み合わさり、ベトナムは「訪れやすい国」として急速に進化している。次のベトナム旅行では、新しい空港や路線を活用してこれまで行けなかった地域に足を伸ばしてみてはいかがだろうか。
ベトナムのデジタルノマドビザ事情
ベトナムはまだ専用のデジタルノマドビザを設けていないが、90日eビザが事実上のノマドビザとして機能している。ベトナム観光諮問委員会は、タイのDTV(デジタルノマドビザ)やマレーシアのDE Rantauのような長期滞在ビザの導入をPM(首相)に提案しており、近い将来の制度化が期待されている。
現状でも、90日eビザを利用して日本を含む多くの国籍の旅行者がベトナムで長期滞在しながらリモートワークをしている。ハノイの旧市街やホーチミンのファムグーラオ・ドンコイエリアにはノマドワーカー向けのカフェやコワーキングスペースが急増しており、インフラ面での受け入れ体制は整いつつある。正式なノマドビザが導入されれば、さらに多くのリモートワーカーがベトナムを拠点に選ぶ可能性がある。
【筆者所感】ホーチミンやハノイで仕事しながら長期滞在するのは、生活コスト・食事・人の温かさを考えると非常に快適な選択肢だ。コーヒーが美味しい国でPCを広げながら仕事できる環境は、東南アジアの中でもベトナムが特に充実していると思う。制度面が整えば、ベトナムはノマドの定番拠点になるだろう。

