7月に入り、インドネシアのバリ島・ロンボク島・ボルネオ島(カリマンタン)が乾季のピークシーズンに突入した。タイやベトナムがモンスーンに見舞われる一方、この地域は晴天が続き観光客が急増している。しかし人気の裏側には、混雑・物価高騰・環境負荷という課題も浮かび上がっている。
バリ島:過去最多ペースの訪問者数
バリ州政府の発表によると、2026年上半期の外国人訪問者数は過去最多ペースで推移しており、7〜8月のピークに向けてさらなる増加が見込まれている。ヌグラ・ライ国際空港の発着便数はコロナ前を上回るレベルに達しており、空港での混雑が旅行者の最初のストレス要因になっている。
スミニャック・クタ・クロボカンなどの南部リゾートエリアは宿泊施設の稼働率がほぼ100%に近く、直前予約はほぼ不可能な状態だ。一方でウブドや北部のロビナ、東部のアメッドなどはまだ比較的余裕があり、混雑を避けたい旅行者にはこれらのエリアがおすすめだ。
バリ州政府は観光客の過密化に対処すべく、2025年から導入した観光税(外国人1人あたり15万ルピア≒約1,500円)の使途の透明化と増額を検討している。観光収入を環境保全・インフラ整備・地域住民への還元に充てる仕組みの構築が急務だ。
【筆者所感】バリには何度も行っているが、年々混雑が増している印象だ。以前はビーチサイドのワルン(食堂)でのんびりできたのが、今は周りが観光客だらけで独特のローカル感が薄れてきた。それでもウブドの棚田や火山の景色は変わらず美しく、朝早い時間に人が少ないうちに訪れると別世界のような静けさがある。観光地化の波と上手く付き合いながらバリを楽しむコツは、「朝型人間になること」だと思っている。
ロンボク:バリの「次の目的地」として注目
ロンボク島は、バリ島の混雑に疲れた旅行者の「次の選択肢」として急速に存在感を増している。ギリ諸島(ギリトラワンガン・ギリメノ・ギリエア)の透明度の高い海とのんびりした雰囲気は、「10年前のバリ」に似た体験を求める旅行者を引きつけている。
インドネシア最高峰リンジャニ山(3,726m)を擁するロンボクは、トレッキング愛好家にとっても聖地だ。乾季(6〜8月)はリンジャニ登山の最適期であり、山頂からの日の出とカルデラ湖の絶景を目指すトレッカーが世界中から集まる。ただし入山管理が強化されており、公認ガイドとの同行が義務付けられている。
【筆者所感】ギリトラワンガンに初めて行ったとき、島内に車がなく(移動は馬車か自転車のみ)、夜は星空が圧倒的に美しかった。観光客は増えてきているが、バリと比べればまだ「素朴さ」が残っている。ロンボクの良さは「何もしない贅沢」にあると思う。
ボルネオ:エコツーリズムの最前線
ボルネオ島(インドネシア領カリマンタン・マレーシア領サバ州とサラワク州)は、オランウータンの生息地として知られる世界有数の生物多様性スポットだ。近年は「エコツーリズム」の目的地として注目が高まっており、熱帯雨林のトレッキング・野生動物観察・川下りなどを体験できるツアーへの需要が増加している。
マレーシア・サバ州のコタキナバルは直行便の就航数が増えており、日本からのアクセスも改善されている。乾季のボルネオは野生動物の観察に最適で、キナバタンガン川周辺ではオランウータン・テングザル・ワニなど多様な動物に会える可能性がある。
【筆者所感】ボルネオの熱帯雨林に足を踏み入れたとき、その生態系の豊かさに圧倒された。日本ではまず見られない動植物が次々と現れ、自然の巨大さを改めて実感した体験だった。観光客として訪れる際は、認定ガイドを利用し環境に配慮した行動を心がけることが重要だ。
まとめ
バリ・ロンボク・ボルネオはそれぞれ異なる魅力を持ちながら、今が「旬のシーズン」だ。ただし人気エリアは混雑と価格高騰が顕著なため、旅の目的と許容できる混雑レベルを事前に考えた上で行先を選ぶことをおすすめしたい。バリの賑わいを楽しむのか、ロンボクの静けさを求めるのか、ボルネオの大自然に挑むのか——選択肢は豊富だ。
インドネシアの観光税と「質の高い観光」への転換
バリの観光税は東南アジア全体での「観光の質」をめぐる議論を象徴する動きだ。量(訪問者数)から質(一人当たり消費額・環境への配慮)への転換は、タイ・マレーシア・フィリピンでも同様の課題として議論されている。タイは高所得層向けの医療・ウェルネス観光の振興を掲げ、フィリピンはボラカイ島での観光客数制限と環境保全の両立を模索している。
東南アジアの観光地が「安い・賑やか・気軽に行ける」というイメージから脱却し、「特別な体験・環境配慮・地域との共生」という新しい価値を提供できるかどうかが、今後10年の持続可能な観光の鍵になる。旅行者としても、「いかに安く大勢で楽しむか」から「どう深く・質高く体験するか」への意識シフトが求められている時代になってきた。
【筆者所感】正直に言うと、10年前と比べて東南アジアの「安さ」は薄れてきた。バリの良いホテルやレストランは東京と変わらない、あるいはそれ以上の価格になっている。それでも「体験の密度」という意味では東南アジアはまだ圧倒的な価値がある。観光税や入場制限は、長期的に見れば旅行者にとってもメリットになる可能性がある——混雑が減り、環境が守られ、より本物の体験ができるようになるからだ。

